2007年07月07日

「「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった」

また1日あいてしまいましたが、積み読了本をなんとか消化しようという感想文。
今日は、「「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった」です。
著者は多賀敏行氏、外交官で各国大使館に勤務し、2004年7月現在はバンクーバー総領事とのこと。自分が読んだのは昨年9月頃ですが、初版は2004年7月です。

著者が外交官という職業を通じて、日本から見た海外への評価と、海外から見た日本への評価に齟齬を感じていたことから、その原因を探り、検証し、この本に結びついたとのこと。海外で日本や日本人は高く評価されているのに、何故日本では海外から低い評価を受けているように感じるのか。それを調べていくと、実は誤解と誤訳によって日本国内に間違った情報が流れていたというのがこの本の要旨です。

内容は全9章で、各章毎に一つの誤訳や誤解について調査・検証した結果が述べられています。このうち、おそらく日本人であれば知っているのが、
・マッカーサー元帥の「日本人は12歳」発言
・「エコノミック・アニマル」「日本人はウサギ小屋に住んでいる」
の2つではないかと。
これらについて簡単に取り上げてみたいと思います。

マッカーサー元帥の発言については、1951年米国上院の軍事外交合同委員会での証言の中に出てきます。そして、証言から11日も経ってからAFP共同電で日本に伝えられ、それを受けて朝日新聞が天声人語で「日本人は12歳」発言を取り上げ、それ以後マッカーサー元帥への尊敬の念は失われました。
しかし、実のところ議事録の文脈を辿ってみると、ドイツとの比較によって「日本人は12歳」が出てきたことがわかります。この委員会で、マッカーサー元帥は日本を最大限擁護し、「先進国並みの自由を得た」ことで再度戦争を仕掛けることはないだろうと証言します。しかし、ドイツは二度、世界大戦の引き金を引きました。そこで委員から「ドイツはまた戦争を仕掛けたが、日本がそうならない可能性は?」というツッコミを受けます。
そこで「ドイツ人は成熟しており、例えるなら45歳。それに比べると日本人は12歳ほどであり、柔軟で新しい考えを受け入れることができる。ドイツが国際的規範を破ったのは意図的だったが、日本は(若い故に)ついうっかりそうしてしまった。」というかなり日本寄りの答弁をします。ところが、この中の「日本人は12歳」という発言だけが切り貼りされて日本に伝えられると、日本国内ではまるで逆の意味になってしまいました。

これを読んで、日本のマスコミは昔から変わってないんだな〜と変な感心をしてしまいました(笑)。最近も発言の切り貼りで大臣の失言云々なんて話が出てますけど、さて発言の真意はどのあたりにあったのか。マスコミは意図的なのかどうかわかりませんが、こういったことをやらかすものだということを頭に入れておかないといけません。

「エコノミック・アニマル」「日本人はウサギ小屋に住んでいる」という発言については、さっきとは違いマスコミ(翻訳者)の能力不足といって良い事例のようです。

「エコノミック・アニマル」とは、1965年第2回アジア・アフリカ会議の際にパキスタンのブット外相が"The Japanese is an economic animal."と発言し、それを日本の記者が「日本人とは金に飢えた動物」と訳して記事にしたため、日本を揶揄する言葉として知られています。ただし、日本国内のみで。
筆者が英国人に確かめてみるとanimalと言う単語には侮蔑的な意味はなく、むしろ褒め言葉に用いられるそうで、この場合は「経済に関しては日本には大変な才能がある」という意味合いの発言だったというのが真相のようです。
もし相手を揶揄するのであれば、animalではなくbeastを使うそうな。

「日本人はウサギ小屋に住んでいる」とは、1979年EC(EUの前身)の対日秘密報告書の中で使われた言葉で、今なお日本人を揶揄する言葉として現役(?)と言っていいと思います。
この言葉は、英字のジャパン・タイムズでも"rabbit hutches"とされていて弁解の余地がないように思われます。が、実は原典はフランス語で、そこには"cage a lapins"とあり、これはフランス語の慣用句で「画一的なアパルトメントからなる建物」を意味します。つまり、フランス語から英語に訳す際に、訳者(おそらくジャパン・タイムズの記者)が"cage a lapins"という慣用句を知らずに直訳してしまったため、その英語を日本語に訳して誤解が広がったということです。
実は「日本人は画一的な市民住宅のようなところに住んでいる」という程度の意味合いだったというのが真相でした。


訳語一つ、知識一つでこれほどまでに意味を取り違えてしまうのだと、そしてその影響はとんでもない事態を引き起こすという事に慄然とします。マスコミには常に慎重で、検証を忘れない姿勢を求めていかないと危険だというのが正直な感想でした。たった一つのミスが国益を損なうことに繋がりかねません。もちろん、マスコミだけでなく政府や一般企業を問わず翻訳・通訳をする人全般にも当てはまることだと思います。
最近はインターネットの発達で、自分のような一般人でもやろうと思えば原典(一次ソース)にあたることができるようになりました。(まあ、語学力は別として……)
しかし、それ以前の情報に関しては、例え定説というくらいの評価があっても鵜呑みにしてはいけないものなのだと感じました。

ただ、著者自身も語っているように、30年外交官をやっていても知らない単語が出てくる時があると。つまり、この本自体も決して完璧な情報ではなく、鵜呑みにするわけにはいきません(笑)。というのは半分冗談ですけどね。
どんな情報でもまず疑ってかかり、他と報道内容と比較して、できれば裏を取る、など自分で情報を収集・検討する癖をつけないと、と改めて思います。


最後におまけ。
「グローバル・スタンダード」という言葉もこの本で取り上げられていますが、実は和製英語だそうでして(笑)。
石原都知事が2001年にダボス会議でアメリカを批判するために「グローバル・スタンダードはアメリカン・スタンダードではない」と言ったのに、外国人記者の反応が悪いとオカンムリだったそうですが、和製英語ではねぇw
言われれば日本人なら、あぁなるほど、と納得できます。けど、外国人はグローバル・スタンダードと言われて、それってISO規格のこと?くらいにしか思えず、結果「国際規格はアメリカ規格じゃない、なんて当たり前のことを言ってるよこの人」ってな感想しかなかったようです。
言葉ってのは難しいものですねw
posted by plop at 21:53| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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