2005年06月18日

ネコソギラジカル(中) 読了

ネコソギラジカル(中)」を読み終わりました。
物語的には、「ネコソギラジカル(上)」からの続きの部分が(当然ながら)ほとんどを占めていました。主人公である戯言遣い「いーくん」と、「いーくん」を敵と認識している西東天(生きているうちに世界の終わりを見たいがために世界を終わらせようとしている人物)との争いがメインです。ただ、そのストーリーが面白かったというとそうでもなし。どちらかというと肩透かしというか期待外れというか。

文章的にも、なんというか密度が薄いというか淡泊すぎるとかそんな印象を受けました。


この戯言シリーズは、流行している漫画・アニメのいろいろな要素を取り入れてミステリー風味に仕上げたものだと思っています。
超人的な能力を持つ異能殺人集団が次々と敵として或いは味方として登場するあたりはすごく少年漫画的要素ですし、「いーくん」の味方がほとんど女性でそれぞれに強烈かつ他のキャラと重ならない個性が割り当てられているあたりも、最近の萌え漫画やギャルゲ的な要素満載です。
そして、戯言遣いという「言葉」を武器とする人物を主人公に据えることによって、類義語・同音異義語などを繰り返し使うことができ、人物の容姿・言動・行動の印象を強烈にすることに成功しています。漫画・アニメ等では登場人物の要素をデフォルメすることによって個々のキャラクターを際だたせていますが、これと同じことを文章のみで行っていると言えます。

前置きがちょっと長くなりました。
さて、こういった要素を持った作品が行き着く先は何かというと、登場人物のインフレです。
少年漫画では、特にいわゆるジャンプ的作品では連載が長くなるにつれて敵の数が増え味方の数が増え、敵の能力は有り得ないほどに大きくなっていき、それにつれて主人公と味方の能力も上がっていきます。
萌え漫画等では、女性キャラの増加とそれに伴う属性(性格・外見)の増加がよく見られます。ただ、1つの作品で増えるということはあまりなく、同作者の次の作品で増加とか、同雑誌の次の企画で増加といったように、一度ヒットしたら次は手を広げてといった感があります。

そして、戯言シリーズもこれらと同じ道を辿っています。
1巻目の「クビキリサイクル」では、絶海の孤島の女性オーナーが天才・異能と自他共に認める人物達を島に招き、そこで起こる殺人事件をミステリー仕立てにしています。この時の主な登場人物は10人くらいだったでしょうか。
そして、巻数が進むにつれて段々と登場人物も増えていきます。ある巻だけに登場して出てこなくなった人物も含めると40人以上はいるのではないでしょうか。人物が増えるだけであればそれほど問題はないのですが、その能力も人間離れしたものから怪物じみたものへとインフレしていきます。

その結果なにが起こるかというと、人物一人一人の希薄化です。
人物が増える、能力も絶大、言動も異様、となるとなるべく文章を割いてその人物を際だたせ、様々な魅力をそこに描かなければいけません。しかし、当然ながら、小説には文章量に限界があります。
このシリーズでは個性的で魅力的な人物、いわゆるキャラが立った人物を敵味方問わずによく殺します。これによってキャラの希薄化がある程度緩められていますが、それでも十分ではありません。減る人数より増える人数が多いからです。
こういった場合に人物一人一人の希薄化を抑えるためには、ストーリーの進捗を遅くして場面の転換を少なくするしかありません。幕間のような些細な場面は削り、大きな舞台のような場面で一気にストーリーを進めてしまうのが効果的です。
これを行えばもちろん物語性が犠牲になります。しかし他に手立てはありません。

サイコロジカル(下)」あたりから勢いが落ちている、もっというとつまらなくなっているのは、上記が原因なのではないかと考えています。

もし、もしも西尾維新が登場人物のインフレまで考慮に入れて戯言シリーズを書いているのであれば、両手をあげて降参するしかありません。つまり、登場人物のインフレを意識的に起こして、モチーフにした作品達へのオマージュとして、インフレしていく様すらオマージュとしていたとしたなら、もう白旗を揚げるしかありません。
このために戯言シリーズを書いていたというのであれば、何も言うことはありません。驚嘆し感心して、感動すら覚えてしまうでしょう。

ネコソギラジカル(中)は、最後の最後でいよいよラストに向かい始めましたが、ネコソギラジカル(下)で、物語的に文章的にどんな締め方を見せてくれるのか期待半分不安半分です。
posted by plop at 16:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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