2006年05月17日

「俺様国家」中国の大経済

溜まっている本の感想を書いてしまおう第3弾。
……前回感想を書いてから1ヶ月経ってしまった…反省、超反省orz

2005年11月、文春新書から出版された「「俺様国家」中国の大経済」。もちろん読んだのは昨年11月。ですが、すっかり旬を逃して……
さ、気を取り直して。
著者は、切込隊長BLOGでお馴染み山本一郎氏。もともと切込隊長BLOGをブックマークしていた上、株を始めたばかりで政治国際経済に一際興味が出てきた時の刊行だっただけに即買いしたわけです。

さて内容ですが、簡単に言うといわゆるチャイナリスクについて、豊富な情報を元に色々な事例を出しながら紹介しています。
しかしながら、一番インパクトが強いのが、帯。ふつーこういう新書に付いてる帯といえば、本の高さの5分の1くらいで誰それの紹介文やら「著者がナニナニについて斬る!」というのが定番ですが、この本では高さの半分以上の帯が付いていてしかも煽り文句は「日本人ビジネスマンへ「中国人は足し算ができないらしい!?」」と題名よりもデカイ文字で書いてあります(笑)。
もちろん内容も帯に負けず衝撃的なことばかりです。

のっけから2004年経済成長率の数値の怪しさがクローズアップ。中国当局は9.5%と発表していますが、各省ごとに発表された経済成長率を足し合わせると11.9%〜12.1%。誤差という範囲を超えて、明らかに違っています(笑)。これが「中国人は足し算ができないらしい!?」(そして割り算も)の根拠の一つだったりもします。
先日、2005年の経済成長率は9.9%と発表されましたが、この数字も怪しいもので、アメリカからの元切上げ圧力をなんとか避けようと公式発表を2桁成長率にはしなかったんじゃないかと勘ぐってしまいます。というかそうに違いありません。
日経ビジネスの記事にも統計に関することが書いてありますね)

こういった数字の曖昧さは経済成長率だけでなく、人口、雇用統計、不動産市況、消費者物価、農業生産高、エネルギー消費量、国営企業の数、果ては銀行の数までも確定できないといった状況。中国当局はこれらの数字を把握できていないか、もしできていても当局以外は確認できないという環境にあるのです。
そして、貿易収支。外国との取引なので当然、当該国との収支を付き合わせれば正確な数値が出るはずなのですが(もちろん北朝鮮とかは除く)、ここで100億円単位で違っていると。消えたお金はどこに行ってしまったんでしょう(笑)。(答:高級官僚の懐)

これまで中国で正確なのは為替(固定相場だった時)と時報だけといわれていたのが、曲がりなりにも変動相場(といえるのか?あれは)になったのと、どれくらいの偽造紙幣が紛れ込んでいるかさっぱりわからんということで、為替も正確かどうかわからなくなり、今や正確なのは時報だけという有様。
これでまだ「はじめに」の16ページまでなんですからイヤになります(笑)。

まだまだ続く中国の適当さ。国営銀行4行の不良債権の平均が貸出額の10%超。
これがどんなもんかというと、日本で不良債権問題が表面化した時に「こりゃ銀行ツブさないかん」といわれた基準が5%。しかも、中国では利息が100円でも払われていれば不良債権とカウントされないでこの数値。もはやあり得ない(笑)。
しかも中国では、借金を返せなくなっても借金額の10%程度の罰金で無罪放免。とんでもない借り手有利市場、かつ、銀行側も確定した損失を不良債権処理専用会社に移して終了。もちろん何も解決してません。
日本ですら不良債権問題の時には国家が破綻すると言われたものですが、その言を借りれば「中国経済は大クラッシュ寸前」としか考えようがありません。

そして、「はじめに」の最後のまとめ。ここは引用させてもらいます。
経済学の常識から離れてしまう理由は、直截的には主に3つの点だ
 ひとつは経済圏に参画しうる人口が多すぎることと、ふたつは中国共産党支配という政治形態によって「経済的に正確な情報」が「政治的に正しい情報に置き換わってしまうこと」、そして、三つは中国経済においては補足不能な地下経済が膨大なキャッシュを貯め込んでいることだ。

これだけで、何かしらの商売(個人投資家も含む)をしている人には、中国っつーのはいかにわけがわからなく恐ろしいところだと分かっていただけるかと思います。だって、他の国で通用する経済常識が通用しないんだもん。

正直、「はじめに」だけの部分でお腹一杯。前回の「韓国人から見た北朝鮮」でも同じようなことを書きましけど、本当にお腹一杯なんですもの。

あとは章ごとの題を記して、簡単に紹介します。

 第一章 いびつな粉飾国家の実相
 第二章 貧乏人のためのファンダメンタルズ
 第三章 銀行不良債権の諸行無常
 第四章 あまりにも共産党的な人民元革命
 第五章 資源・エネルギーをめぐる大暴発
 第六章 米中対立時代の新秩序
 第七章 チャイナリスクとどう対峙するか

この中で「はじめに」にあまり書かれていないのは第五章〜第七章。第四章までは「はじめに」の事例がより詳細に書かれています。

第六章では、これまでの米中の補完関係(主に貿易)が終わり、対立構図へ向かっていくこと。第七章はまとめとして、中国と組むのはあまりにリスクが高く、アメリカと組むのが一番良いとの主張が主です。(もちろん個人的にはこの結論に諸手を挙げて賛成)

第五章の資源・エネルギーをめぐる大暴発では、中国のエネルギー事情の現状と将来見通しについて。
現在の中国では発電はほとんど石炭で賄われていて、しかも闇発電所まで出現する有様。電気という現代国家にとって必要なエネルギーを、国が管理できてないという驚くべき事実です。そして、発電はできるものの送電インフラが整っていないのでせっかく発電した電力を効率よく消費地に送り届けることができないという、非常に非効率な状態になっています。
安定した電力を享受している日本人としては、指差して笑っていればいいことなんですが、将来を考えると笑ってばかりもいられません。

もちろん中国も現状を座視しているわけではなく、原油を手に入れるため様々な動きを見せています。その中でも一番大きいのは中央アジア・中東・アフリカの原油産出諸国に対する働きかけです。簡単に言ってしまうと、武器売却や軍事協力の見返りに原油利権を押さえにかかっています。
さて、今のところ日本は中東原油諸国との長い付き合い、そしてアメリカの同盟国ということで、原油についてはあまり気にしなくていい状況にあります。しかし、20年50年経った時に中東での日本の地位が中国より相対的に低下したら?アメリカが政策転換して世界全体に対する影響力が低下したら?
そう考えると笑っていられません。
まあ、その前に中国発の経済危機が発生してエネルギーどころじゃなくなる可能性の方が高そうですが(笑)。


というわけで、チャイナリスクという名の、中国の信じられない経済事情が盛りだくさんの本書。
中国でのビジネスに関わっている人には激しく同意され、これから進出を考えている人にとっては警鐘になるのではないかと。そして、海外の動きに逐一影響される日本の株式市場に携わっている人は読んでおいた方がいい本だと思います。影響力が増大している隣国がこんな有様だということを知れば、少なくとも中国株に手を出す個人投資家はいなくなるのではないかと(笑)。

まあ、紹介するには旬を過ぎてしまったのですが…(しつこく反省)

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以下、本の感想からは外れまして。

個人的な予想としては、2015年頃までに上海から香港にかけての沿岸部は独立するんじゃないかな〜なんて思ってたりします。というか、妄想なんですが(笑)。

日々是チナヲチ。で中国の内情を知ることができますが、最近は上海閥と北京との対立構造、そして地方を未だ掌握できない中央政府、という図式が更に鮮明になってきています。上海は沿岸部という有利さ(と中共内の政治力)を活かして発展を続けていますが、他地域との格差が広がるにつれて北京その他を疎ましく思い始めているようです。
そして日々高まるアメリカからの元切上げ圧力。つい先日、初の1ドル=7元台に突入しましたが、アメリカはもちろんそんなもんじゃ納得してません。30代以上の方には、中国は、1980年代のジャパンバッシングが起こる直前の日本と同じ状況にある、と言えば通りがいいかもしれません。

こうなると北京中央政府の政策に縛られるより、自分達の地域だけで経済政策を執り行った方が得だと考えるのは当然の帰結だと思います。北京から離れることでバッシングの対象にはならなくなるし、なにより西側の経済政策を余すところ無く導入してより一層の発展が見込めます。
無論、その時は内戦になるのがほぼ決定ですが。

ただ、上海にとってあまりリスクが高くない状況が発生する可能性はあります。
それは、台湾独立。

もし、もしも、北京オリンピックの1年前あたりに台湾が「独立した後、選手団を送り込む」な〜んて言い出したらどうなるでしょう(笑)。
人民軍が公式に語っている通り台湾を武力制圧すれば、北京オリンピックはモスクワの二の舞になるでしょう。もしかしたらオリンピック自体が他都市で開催されてしまうかもしれません。面子を重んじる中国にとって、国際舞台で最大の恥辱を味わうことになります。さて、中共の中の人にそれが許せるのか?
しかし、台湾の独立を許せば、東トルキンスタン(Wiki)やチベット自治区(Wiki)などの独立運動に拍車をかけるのは必至。オリンピック開催を待たずに内乱状態になる可能性もあります。

そして上海には、その混乱に乗じて独立運動を起こすという選択肢が生まれるわけです。中共の威信が地に落ちるか、内乱状態になっている時に、アメリカの後ろ盾でも得てから独立すれば結構すんなりいくのではないかと。そんなことを考えたりしてます。
ただ、最近、台湾人の独立気運が盛り下がってますからねぇ……

あ、中国経済クラッシュ→中国国内大混乱→中国分割、という線も捨てがたいところです(笑)。

こうなると日本としては万々歳なんですけどね。妄想ですけど(^^;
posted by plop at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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